このアンプの回路図
- 2021/05/18
- 20:42
ではいよいよ,このアンプの回路図を見てみよう。これは田村耕一氏が無線と実験という現在も健在な月刊誌に発表したもので,ここに引用する。(クリックで拡大)

何も判らなくても,なんだか単純そうだという感じはすると思う。正にこのアンプは,回路を単純化し,出来るだけ部品を減らし,音質の向上を狙った設計である,と私は思っている。なんだ,自分の設計ではないのか,という声も聞こえるが,このような単純な回路の場合,特に異なるものは作れず,氏の思想に共感した私は,そのまま使わせてもらっている。下手にいじるより優れた結果が得られるだろう。とは言え,実際には,部品の数値が異なる部分もある。出来の良し悪しは,実際の配線に大きく左右される。配線とは,配線材ではなく,線の引き回し位置(≒部品配置)という意味である。鰯の頭で,配線材にはOFC(99.99%純銅:現在は99.9999%になっているらしい)
【回路図中の記号の説明】
回路図は片チャンネル分である。現在のオーディオシステムはステレオ(左右2チャンネル)が常識だが,最初はモノラル(1チャンネル)だった。つまり1個のスピーカー。その後ステレオが標準になり,いっときは4チャンネルというのが流行った。今は,映画用のサラウンドが5.1チャンネルやそれ以上というのもあるが,音楽用はやはり2チャンネルが標準。このアンプも2チャンネルだが,左右は同じなので,通常回路図は片方のみ記載する。
電源は記入されていない。図を判りやすくするために,電源部を分けて記載することがしばしばある。このアンプの電源はちょっと変わったものにしたので,後々解説する。
このアンプ部の回路図では,左が入力側で,右が出力側。よって,プリアンプやCDプレーヤーから入ってきた音声信号は,左から右へと増幅されながら進む。1番右の8Ωというのはスピーカーのことである。
(真空管)
電子部品は素子とも呼ばれる。真空管は,信号を増幅したり,整流(交流を直流にする)する働きがある素子だ。その後,トランジスタという素子に取って代わられ,今はそのトランジスタもICやLSIという極小のものに置き換わっている。パソコンのCPUを初めとする超LSIなどは,数千個のトランジスターが1cm四方のチップに詰め込まれている。もはや,オーディオの世界でくらいでしか,真空管もトランジスタも殆ど使われなくなった。
回路図中の3つの丸い記号が真空管である。左の2つは向かい合う側の半分ずつが破線になっているが,これは2個の真空管が1個のパッケージ(1本のガラス管)にまとめられているという意味で,左が前段,右が励振段となる。よって,このパワーアンプには片チャンネルで2本,ステレオで4本の真空管(増幅素子)が使われているだけである。
またここで使っている真空管は全て三極管と呼ばれるが,その名の通り,3つの極(端子)が出ているのが判る。1番右の2A3の下が逆V字となっていて2本あるので実際には全部で4本あるが,実は信号が流れる極は,逆V字の2端子でひとつの役目をしているので,やはり三極管である。
左の6SC7というのは,特性の異なる2ユニットが1本のガラス管にパッケージされた双三極管(全く同じ特性の2個が入ったものもある)と呼ばれるもので,1950年代にアメリカのRCAでテレビ用(垂直発振/偏向用出力管)として開発され,東芝やNECでもライセンス製造されている。オーディオアンプには,この回路の様に電圧増幅用に使われる。手持ちの真空管は色々あるが,このアンプでは,全てRCAの球を使っている。
6SC7には,ヒーター用の電極が独立して2本別にあるが,それらは回路に関わらず,決まった電源に繋がるので省略されている。よって電極は全部で8個ある。図中で9番の数字があるが,9個のピンの内,2番ピンが空きで内部には接続されていないので,外観(足の数)は,3極×2+ヒーター2端子の8ピンと空き1ピンの9ピンである。このようにヒーター回路が独立したピンを持つタイプは傍熱管と呼ばれる。
一方の2A3は直熱管と呼ばれ,信号用の端子ひとつとヒーター用の端子ふたつが共用されている古いタイプの真空管である。2A3は,RCAが1930年代初頭に開発したオーディオ用の出力管だ。主に,劇場や映画館のPAとして使われた。製造メーカーや時期によって,内部構造が異なる。現在でも中国やロシアなどでは製造されている,かな?面白いことに,電気的特性は,同じ型番(例えば2A3)なら同じなのだが,音質は違ったりする点である。
傍熱管か直熱管かということは,直接的に音質の善し悪しには関らないが,評価の高い音質の出力管は直熱管であることが多く,人気も高い。なによりも見た目がレトロチックで良い。真空管は,進化の過程で傍熱管に変化して行ったので,傍熱管の方が特性的に優れていると考えるのが普通だが,そこは鰯の頭である。かく言う自分も信奉者であるw
ちなみに,真空管の呼称の頭の数字はヒーター電圧を示している。2A3のヒーターは2V(実際には2.5V),6CS7は6Vで赤熱するようになっている。直流でも交流でもよい。当然それ以上の電圧が掛かると断線してオシャカとなる。一般的には,ヒーター電圧は6Vか12Vのものが多いが,例えば有名な,ウエスタン・デジタルのオーディオ出力管のWD300Bは300が頭なので,ヒーター電圧は300Vとなりそうだが,実は5Vである。このように,メーカーによってはこの表示形態を取らないものもある。
真空管というのは熱を利用して電子の移動(電気の流れ)を作る素子なので,電熱器のようなヒーターが電極の中に仕込まれていて,それが作動中にオレンジに輝く。それだけで音がよく聞こえたりする気になるのである。鰯の...。
真空管は大喰いで,冬場はストーブが要らないほどの発熱がある。当然電気代が掛かる。
真空管には,信号用の電極が4個のビーム管,5個ある五極管というのもある。3極管と5極管がひとつのパッケージに入った複合管もある。このアンプの電源で使っている5Z3のような整流用真空管は2極管である。今で言うダイオードである。ちなみに,3極管はトライオードと呼ばれる。

何も判らなくても,なんだか単純そうだという感じはすると思う。正にこのアンプは,回路を単純化し,出来るだけ部品を減らし,音質の向上を狙った設計である,と私は思っている。なんだ,自分の設計ではないのか,という声も聞こえるが,このような単純な回路の場合,特に異なるものは作れず,氏の思想に共感した私は,そのまま使わせてもらっている。下手にいじるより優れた結果が得られるだろう。とは言え,実際には,部品の数値が異なる部分もある。出来の良し悪しは,実際の配線に大きく左右される。配線とは,配線材ではなく,線の引き回し位置(≒部品配置)という意味である。鰯の頭で,配線材にはOFC(99.99%純銅:現在は99.9999%になっているらしい)
【回路図中の記号の説明】
回路図は片チャンネル分である。現在のオーディオシステムはステレオ(左右2チャンネル)が常識だが,最初はモノラル(1チャンネル)だった。つまり1個のスピーカー。その後ステレオが標準になり,いっときは4チャンネルというのが流行った。今は,映画用のサラウンドが5.1チャンネルやそれ以上というのもあるが,音楽用はやはり2チャンネルが標準。このアンプも2チャンネルだが,左右は同じなので,通常回路図は片方のみ記載する。
電源は記入されていない。図を判りやすくするために,電源部を分けて記載することがしばしばある。このアンプの電源はちょっと変わったものにしたので,後々解説する。
このアンプ部の回路図では,左が入力側で,右が出力側。よって,プリアンプやCDプレーヤーから入ってきた音声信号は,左から右へと増幅されながら進む。1番右の8Ωというのはスピーカーのことである。
(真空管)
電子部品は素子とも呼ばれる。真空管は,信号を増幅したり,整流(交流を直流にする)する働きがある素子だ。その後,トランジスタという素子に取って代わられ,今はそのトランジスタもICやLSIという極小のものに置き換わっている。パソコンのCPUを初めとする超LSIなどは,数千個のトランジスターが1cm四方のチップに詰め込まれている。もはや,オーディオの世界でくらいでしか,真空管もトランジスタも殆ど使われなくなった。
回路図中の3つの丸い記号が真空管である。左の2つは向かい合う側の半分ずつが破線になっているが,これは2個の真空管が1個のパッケージ(1本のガラス管)にまとめられているという意味で,左が前段,右が励振段となる。よって,このパワーアンプには片チャンネルで2本,ステレオで4本の真空管(増幅素子)が使われているだけである。
またここで使っている真空管は全て三極管と呼ばれるが,その名の通り,3つの極(端子)が出ているのが判る。1番右の2A3の下が逆V字となっていて2本あるので実際には全部で4本あるが,実は信号が流れる極は,逆V字の2端子でひとつの役目をしているので,やはり三極管である。
左の6SC7というのは,特性の異なる2ユニットが1本のガラス管にパッケージされた双三極管(全く同じ特性の2個が入ったものもある)と呼ばれるもので,1950年代にアメリカのRCAでテレビ用(垂直発振/偏向用出力管)として開発され,東芝やNECでもライセンス製造されている。オーディオアンプには,この回路の様に電圧増幅用に使われる。手持ちの真空管は色々あるが,このアンプでは,全てRCAの球を使っている。
6SC7には,ヒーター用の電極が独立して2本別にあるが,それらは回路に関わらず,決まった電源に繋がるので省略されている。よって電極は全部で8個ある。図中で9番の数字があるが,9個のピンの内,2番ピンが空きで内部には接続されていないので,外観(足の数)は,3極×2+ヒーター2端子の8ピンと空き1ピンの9ピンである。このようにヒーター回路が独立したピンを持つタイプは傍熱管と呼ばれる。
一方の2A3は直熱管と呼ばれ,信号用の端子ひとつとヒーター用の端子ふたつが共用されている古いタイプの真空管である。2A3は,RCAが1930年代初頭に開発したオーディオ用の出力管だ。主に,劇場や映画館のPAとして使われた。製造メーカーや時期によって,内部構造が異なる。現在でも中国やロシアなどでは製造されている,かな?面白いことに,電気的特性は,同じ型番(例えば2A3)なら同じなのだが,音質は違ったりする点である。
傍熱管か直熱管かということは,直接的に音質の善し悪しには関らないが,評価の高い音質の出力管は直熱管であることが多く,人気も高い。なによりも見た目がレトロチックで良い。真空管は,進化の過程で傍熱管に変化して行ったので,傍熱管の方が特性的に優れていると考えるのが普通だが,そこは鰯の頭である。かく言う自分も信奉者であるw
ちなみに,真空管の呼称の頭の数字はヒーター電圧を示している。2A3のヒーターは2V(実際には2.5V),6CS7は6Vで赤熱するようになっている。直流でも交流でもよい。当然それ以上の電圧が掛かると断線してオシャカとなる。一般的には,ヒーター電圧は6Vか12Vのものが多いが,例えば有名な,ウエスタン・デジタルのオーディオ出力管のWD300Bは300が頭なので,ヒーター電圧は300Vとなりそうだが,実は5Vである。このように,メーカーによってはこの表示形態を取らないものもある。
真空管というのは熱を利用して電子の移動(電気の流れ)を作る素子なので,電熱器のようなヒーターが電極の中に仕込まれていて,それが作動中にオレンジに輝く。それだけで音がよく聞こえたりする気になるのである。鰯の...。
真空管は大喰いで,冬場はストーブが要らないほどの発熱がある。当然電気代が掛かる。
真空管には,信号用の電極が4個のビーム管,5個ある五極管というのもある。3極管と5極管がひとつのパッケージに入った複合管もある。このアンプの電源で使っている5Z3のような整流用真空管は2極管である。今で言うダイオードである。ちなみに,3極管はトライオードと呼ばれる。